CROSS REVIEW

#8 2022年1月31日

哲学者飯盛元章+書評家倉本さおり+現代アーティスト山本れいら

トリスタン・ガルシア「激しい生」

遠野遥「教育」

シカゴ現代美術館「Womanhouse」

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クロスレビューとは?

深く広く楽しみたい。けれどコンテンツの沼は深すぎ、ネットは広大で、どうしても自分の慣れ親しんだジャンルばかり楽しんでしまう。そんな人に様々なジャンルを紹介していくオンライン番組です。
毎月、専門の異なる3名のレビュアーが、分野の異なる3つのコンテンツを共有し、3人で語りつくします。
1年で36のコンテンツと様々なレベルのレビューを紹介。新たな作品や表現との出会いこそ、人生を変えていく。そう信じる皆さん是非ご鑑賞ください。

飯盛元章(いいもり・もとあき)
中央大学兼任講師。現代の形而上学・哲学(特にA・N・ホワイトヘッド、グレアム・ハーマン、カンタン・メイヤスーなど)を中心に研究。著書に『連続と断絶─ホワイトヘッドの哲学』(人文書院)。web記事に「哲学はなぜ世界の崩壊の快楽を探究してしまうのか─パンデミックから破壊の形而上学へ」(講談社現代新書web)。
Twitter https://twitter.com/lwrdhtw/

倉本さおり(くらもと・さおり)
法政大学大学院兼任講師。共同通信文芸時評「デザインする文学」、週刊新潮「ベストセラー街道をゆく!」連載中。小説トリッパー、ダ・ヴィンチにてブックレビューを担当中のほか、文芸誌、週刊誌、新聞各紙で書評やコラムを中心に執筆。『文學界』新人小説月評(2018)、毎日新聞文芸時評「私のおすすめ」(2019)、文藝「はばたけ! くらもと偏愛編集室」(2019~21)。TBS「文化系トークラジオLife」サブパーソナリティ。共著に『世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今』(立東舎)など。

山本れいら(やまもと・れいら)
シカゴ美術館附属美術大学出身。高校から大学にかけてアメリカ留学を経験し、アメリカを知る日本人として、また一人の日本人女性としての視点から「日本とは何か」を問う作品を制作する。主な作品シリーズに、戦後日米関係を原子力から読み解く「After the Quake」シリーズ、妊娠・出産で女性が引き受ける困難を表現した「Pregnant’s autonomy」シリーズなど。主な個展に「After the Quake」(Souya Handa Projects/東京/2021)、グループ展に「New New New Normal」(Gallery MoMo Projects /東京/2020)、「Multi-Cultural/Appropriation」(川口リアクション/埼玉/2019)、「Noisy Kids show curated by Katerina Yewell」(Altspace/ニューヨーク/2016)、「Draw on Raw Exhibition」(Lemoart Gallery/ベルリン/2016)など。

モデレーター・司会 = 永田希

永田希(ながた・のぞみ)
書評家・著述家。『週刊金曜日』書評委員。『ダ・ヴィンチ』でブックウォッチャーの1人として毎号選書と書評を担当。『このマンガがすごい!』『図書新聞』『週刊読書人』などに執筆。時間銀行書店店主。単著に『積読こそが完全な読書術である』(イースト・プレス、2020年)、『書物と貨幣の五千年史』(集英社、2021年)。

2020年の芥川賞受賞後第一作『教育』(著;遠野遥)を挙げたのは書評家の倉本さおりさん。「1日3回のオーガズム」を生徒たちに奨励し、試験の結果で生徒たちのあいだに権力関係を強いる「学校」を舞台にした作品です。文体の不気味な緊張感、「能力主義」の理不尽を衝く物語、催眠や超能力という胡散臭い道具立て。話題作を連発する若手作家の実力を吟味します。
哲学者の飯盛元章さんが挙げるのは、近代人の考え方の根幹にある、「強さ=激しさ」を求める意識が、これまでどう育まれてきたかを指摘する『激しい生:近代の強迫観念』(著:トリスタンガルシア)。『有限性の後で』のカンタン・メイヤスーに教えを受けた仏哲学の俊英が、「刺激を求め、強く激しく生きなさい」という強迫観念の由来を、科学や芸術を参照しながら鮮やかに描き出す一冊です。
フェミニズムアートの歴史に重要な位置を占める展覧会『Womanhouse』を挙げたのは現代アーティストの山本れいらさん。『Womanhouse』は、西洋初のフェミニズムに根差した女性中心の展覧会です。フェミニズムが無視できない勢力として社会に認知されてきている現在、この展覧会を振り返ることの意味を山本さんとともに考えます。女性のためのアート教育プログラムの受講生たち全員を含め21人もの作家が参加し、廃墟を会場として催されたこの展覧会、21世紀の廃墟そのものになりつつあるかもしれない社会で再び有意義に読み直すことはできるのでしょうか。

2022年第1回となる1月末日回からは、モデレーター・司会を毎回変更し、テーマをこれまでよりさらに広げていきます。今回のモデレーター・司会は永田希です。